大判例

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東京高等裁判所 昭和55年(行ケ)211号 判決

原告主張の審決取消事由の有無について検討する。

1 本願商標の構成が、別紙のとおりのものであることは、当事者間に争いがない。

2 本願商標の構成と菊花紋章のそれとを対比検討する。

(一) 本願商標は、別紙のとおり、菊花の一六個の花弁が、いずれもその先端部において丸味を帯びつつ全体が円形に連なり、その先端が円輪郭に内接し、かつ、右花弁が右円輪郭の直径の三分の一足らずのところで途切れ、中央部分には、周囲を放射状に右一六個の花弁で囲まれるようにして、縦書き楷書体で、「博士」の文字が、その縦の長さ及び横の長さが商標全体の長さ(すなわち、円輪郭の直径)のそれぞれ約三分の一及び約四分の一の大きさで表示されている態様のものである。

(二) これに対し、菊花紋章は、形状の種類が一、二にとどまらないが、そのうち、天皇家の紋章は、一六個の花弁が、いずれもその先端部において丸味を帯び、全体が円形をなすように連なり、かつ、その各先端部の連接する部分に、更に一六個の円弧形状を小さく表わして、重弁とし、各花弁は中央部に存する一つの円形の花心からその周囲に放射状に連なつているが、その円形の直径は、一花弁の幅の最長部とほぼ同じ長さとしたものであり、各宮家共通の紋章は、一四個の花弁がいずれもその先端部において丸味を帯び、全体が円形をなすように連なり、かつ、各花弁は中央部に存する総包からその周囲に放射状に連なつていて、いわゆる裏菊となつているが、その総包は、中央の小さい小円とその周囲の小さい葉片状の五片とその各片先端部の連接する部分に更に表われた右五片の先端形状とからなり、その総包の大きさは、一花弁の幅の最長部のほぼ一・五倍の長さの直径の円形に内接するほどのものであることは公知の事実である。

(三) このように、本願意匠と菊花紋章とは、菊花の花弁の数が同一又はほぼ同一であり、また、各花弁の形態及び各花弁が相互に放射状に連なる形態も中央部を除いてはほぼ同一であり、ただ、本願商標は、各花弁の先端が円輪郭に内接し、かつ、その中央部で途切れ、その中に「博士」の文字が表示されているのに対し、菊花紋章は、花弁が重弁となつているか又は内接する円輪郭がなく、また、中央部に円形の花心又は総包があつて、花弁が途切れることなく、花心又は総包に至つている点で異なつている。

しかし、本願商標における花弁の先端が内接する円輪郭は、花弁の先端部が前記のとおり丸味を帯びてこれに接している関係上、その部分では花弁の先端部に吸収されているようにも見え、したがつて、その存在が、重弁の菊花紋章と対比して、さほど際立つたものではなく、また、本願商標における「博士」の文字が、その中央部に前記のような大きさで表示されているところからみて、花心又は総包としての態様上の役割を果しているようにも見られるのである。

(四) 以上の諸点を総合勘案しつつ、本願意匠と菊花紋章とを全体的に観察対比すると、本願商標は、その外観においても、また、看者に想起させる皇室に係る菊花紋の観念においても、商標法第四条第一項第一号にいう菊花紋章と類似の商標であると認めるのが相当である。

(五) なお、成立に争いのない甲第二号証ないし第五号証の各一・二、甲第六号証の一ないし三、甲第七号証の一・二によると、<1>本願商標における円輪郭がない点を除き、他はこれとほぼ同一の構成からなる商標、<2>右<1>の商標の「博士」の文字に代えて「博爵」、「功爵」、「賞士」、「税士」、「爵位」の各文字がそれぞれ表示されている点を除き、他はこれとほぼ同一の構成からなる各商標、<3>本願商標の「博士」の文字に代えて「博爵」の文字が表示されている点を除き、他はこれとほぼ同一の構成からなる商標が、いずれも商標登録されている事実が認められる。

このように、一方において、本願商標の登録が拒絶されるべきものであるとの審決がされ、他方において、右のような各商標が商標登録されている点については、特許庁における取扱は、その限りでは一貫しないとのそしりを免れないであろう。

しかし、右のような登録商標があり、また、原告が主張するようなマークがあるからといつて、このことから直ちに、本願商標が菊花紋章と類似する商標であるとした前記の判断をくつがえすに足りるものでないことは明らかであり、他に右の判断を左右する特段の事情はない。

(六) そうすると、本願商標は商標法第四条第一項第一号の規定に該当するものとして登録することができないとした審決は相当であり、原告の主張は採用することができない。

よつて、本件審決の違法を理由にその取消を求める原告の本訴請求を失当として棄却する。

〔編註〕本件に関する商標は左のとおりである。

<省略>

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